南アフリカ西ケープ・北ケープ州の冬雨地帯(ケープ半島からナマクアランド南縁まで)に広く分布する塊根性ペラルゴニウム。命名権威は (L.) L'Hér.、1789 年。種小名 triste はラテン語で「地味な・くすんだ」、淡黄に暗赤褐色の斑が入る目立たない花色に由来する。地上に短い茎しか出さず、人参様の細かく羽状分裂した葉を地際から広げる地中半埋没の塊茎タイプで、夜になると花は クローブ(丁子)に似た強い甘い香り を放ち、夜行性の長舌ガを誘う。1632 年に John Tradescant the Younger が英国に持ち帰り、ケープ産ペラルゴニウムで最初期に栽培された歴史を持つ古典的な実生(みしょう)入門種。
育て方
置き場所・日当たり

ケープ半島〜ナマクアランド南縁の冬雨地帯出身で、年降水量 200〜600mm のほとんどが冬季に集中、夏は乾く地中海性気候。原産地では砂質の斜面や岩礫地に塊茎を半分埋めて自生する。日本でも生育期の秋〜春は屋外または明るい窓辺でしっかり光に当てると、葉柄が間延びせず葉が地際で締まった姿を保つ。最も注意したいのは梅雨明け以降の 夏の休眠期。直射を避けた明るい日陰(寒冷紗 30〜50%)に移し、棚上に上げてサーキュレーターで風を通す。冬は屋内 5℃ 以上の窓辺で容易に越冬する。
水やり
9〜10月に最低気温が下がり始めたら少量で再開、葉が展開したら乾いてからたっぷり。4〜5月に葉が黄変・落葉したら断水、夏は完全に乾かす。Kirstenbosch では夏も少量与え常緑にする例もあるが、日本の高温多湿では断水が安全。
用土
水はけ最優先で無機質中心に。赤玉土小粒:鹿沼土小粒:軽石 = 3:3:4。原産地は砂質土壌で、深鉢で塊茎を伸び伸び埋め込む構造が合う。
肥料・活力剤
生育期に倍以上に薄めた液肥を月 1 回、または緩効性肥料を植え替え時に少量。痩せ地出身で与えすぎは葉柄が間延びし開花が遅れる。夏は与えない。
温度・冬越し
生育適温 15〜25℃、最低 5℃。夏型ほど高温を好まず、35℃ 超の連続で休眠が深まる。湿土+低温は致命傷で、冬越しは「乾かして 5℃ 以上」が原則。夏越しが冬越しより難しい 種で、6〜9月は遮光・通風・断水を徹底する。

実生のはじめ方
種の入手先
海外: Köhres / Mesa Garden / Succseed / Unusual Seeds / Cactus Store
国内 専門店: プラントブラザーズ / SEEDSTOCK / あるびの精肉店 / 奈良多肉植物研究会
国内 マーケット: ヤフオク / メルカリ / Yahoo!ショッピング
は直接商品ページ、他は学名検索リンク。在庫は流動的なので、検索リンク先で改めて確認してください。
播種前の処理
殺菌剤(ベンレート水和剤・ダコニール1000など)と活力剤(メネデール等)を使用希釈率で混ぜた液に、種子を半日程度浸ける。沈まないものは中身の充実度が低い目安。種子は紡錘形で先端に螺旋状の長い芒(のぎ)が付く独特の形状で、芒は外さずそのまま播く。
用土
実生用は細粒・無菌寄りに。赤玉土細粒:鹿沼土細粒:バーミキュライト = 1:1:1 を熱湯やレンジで殺菌。表層に粗砂を薄く敷くと芒が固定しやすい。
播種方法
芒を上に立てるように軽く挿し、種子本体は半分埋まる程度の浅い覆土に留める。原産地でも芒が湿気を吸って種子を地中に引き込む仕組みがある。
光・温度
明るい日陰で 15〜22℃ をキープ。冬型なので 25℃ を超える加温はかえって発芽率を落とす。日本では 9〜11 月 が適期。発芽は 10 日〜1 ヶ月。
水やり
鉢底 1〜2cm の腰水管理。最初の 2〜3 週間は乾かさず、発芽が揃ったら段階的に水位を下げる。冷たすぎる水は避け室温程度を使う。
肥料
発芽直後は不要。本葉展開後に倍以上に薄めた液肥を月 1〜2 回。初年度から葉を広げ塊茎が膨らみ始める比較的早熟な種で、属内では育てやすい部類。
発芽後〜植え替えまで
発芽〜本葉展開
腰水継続、明るい日陰で管理。
腰水卒業
1〜2 ヶ月かけて段階的に。
初回植え替え
1〜2 年目、秋に深鉢へ。
よくある失敗
カビ・立ち枯れ
- 原因: 過湿、雑菌、通気不足
- 予防: 用土殺菌、腰水の水換え、サーキュレーターで通気確保
徒長
- 原因: 光量不足。冬型は秋〜春の太陽が低く光量を稼ぎにくい
- 予防: 室内なら LED を近距離、晴天時は屋外の明るい日陰へ
種が発芽しない
- 原因: 鮮度切れ、温度が高すぎる
- 予防: 入手後は早めに播く。25℃ を超える加温は避け、室温 15〜22℃ で
夏の高温で停止・腐敗
- 原因: 休眠中の夏に水を与える、風通しの悪い高温多湿に置く
- 予防: 4〜5 月に葉が黄変したら断水、夏は遮光・通風を最優先。エアコンの効いた室内退避も有効
注意点
CITES 非掲載、輸入規制なし。ペラルゴニウム属は多くが無毒だが樹液で皮膚がかぶれる人もいる。



