メキシコ北部・チワワ砂漠から広がる石灰岩台地と石膏露頭(コアウイラ・ヌエボレオン・サンルイスポトシ・タマウリパス・サカテカス各州)に自生する、半地中性の扁平なサボテン。和名「岩牡丹(いわぼたん)」で古くから親しまれる。灰緑〜灰褐色の三角形〜披針形の疣(tubercle)がロゼット状に並ぶ整った姿で、直径 10〜25cm に達する。花期は 9〜11 月で、頂部に白〜淡桃色の花を咲かせる。実生から 10 年でようやく直径 3〜5cm 程度にしかならない極めて遅い成長が特徴。POWO の accepted name は Ariocarpus retusus Scheidw. (1838)、IUCN は Least Concern、属全種が CITES 附属書 I に掲載される。変種・亜種が複数知られる。
育て方
置き場所・日当たり

標高 700〜2,400m の石灰岩台地で年間を通じて強光を浴びて育つが、正午の直射が肌に刺さる場所では表皮が褐変しやすい。生育期は屋外の明るい半日陰、または午前中だけ直射が当たる場所が適する。日本の真夏は 30〜40% 程度の遮光と棚上での通風確保を組み合わせると表皮焼けを避けやすい。サーキュレーターも有効。冬の休眠期は雨を避けて 5℃以上を保てる明るい室内窓辺へ取り込み、断水気味に管理する。
水やり
生育期は用土が完全に乾いてからたっぷり、その後しっかり乾かすメリハリ。低成長で吸水量も少なく過湿に弱い。休眠期は断水気味、月1〜2回霧吹き程度に。
用土
水はけ最優先で無機質中心。赤玉土小粒:鹿沼土小粒:軽石 = 3:3:4 を基本に、石灰岩自生のため少量の蛎殻粉や苦土石灰を配合するとよい。深鉢で主根を伸ばす。
肥料・活力剤
生育期に薄めた液肥を月1回、規定の倍以上に希釈して控えめに。低成長種のため肥料過多は徒長や疣の変形を招く。緩効性化成肥料は植え替え時にひとつまみ程度。
温度・冬越し
生育適温18〜32℃、最低5℃が目安。短期であれば 0℃付近に耐えるが、湿った状態での低温は致命的。冬は完全に乾かして越冬。低成長のため植え替えは2〜3年に1回で十分。
実生のはじめ方
種の入手先
海外: Köhres / Mesa Garden / Succseed / Unusual Seeds / Cactus Store
国内 専門店: プラントブラザーズ / SEEDSTOCK / あるびの精肉店 / 奈良多肉植物研究会
国内 マーケット: ヤフオク / メルカリ / Yahoo!ショッピング
播種前の処理
種子は約 0.5mm と微細。乾いたまま土表面に振りかける。腰水に殺菌剤(ベンレート水和剤・ダコニール1000など)と活力剤(メネデール等)を希釈混合した液を用いる。保管状態によって鮮度差が出るため、入手後はなるべく早く播種する。
用土
実生用は細粒・無菌寄り。赤玉土細粒:バーミキュライト:軽石細粒 = 2:1:1 で、事前に熱湯か電子レンジで殺菌しておく。
播種方法
種子が極小なので覆土なし、土の表面に直接振りかけるだけ。爪楊枝の先で1粒ずつ間隔を空けると後の管理が楽になる。透明蓋やラップで湿度を保つ。
光・温度
明るい日陰で22〜28℃を維持。発芽日数は14〜30日程度で、発芽率は鮮度次第で大きく変動するが、新鮮な種でも発芽は安定しにくい難物。
水やり
鉢底から1〜2cmの腰水管理。種子が極小で乾燥に弱いため、最初の1〜2ヶ月は乾かさないことを最優先する。透明蓋で湿度キープも有効。
肥料
発芽直後は不要。二次刺座が見え始めてから規定の倍以上に薄めた液肥を月1回、ごく控えめに。低成長種なので施肥過多は禁物。
発芽後〜植え替えまで
発芽〜本葉展開
腰水継続、強光は避ける。
腰水卒業
3〜6ヶ月かけて段階的に。
初回植え替え
3年目以降、根が回ってから。
よくある失敗
カビ・立ち枯れ
- 原因: 過湿、雑菌、極小種子の埋没
- 予防: 用土殺菌、覆土なし播種、腰水の水換えをこまめに
徒長・稜の間延び
- 原因: 光量不足、肥料過多
- 予防: 明るい半日陰、施肥は規定の倍以上に希釈して控えめに
種が発芽しない
- 原因: 種の鮮度切れ、温度不足
- 予防: 合法的に入手した新鮮な種を選ぶ、加温マットで22〜28℃を維持
表皮の日焼け
- 原因: 急な強光、夏の高温と強光の重なり
- 予防: 半日陰で管理、夏は30〜40%遮光を入れる
成長停滞・腐り
- 原因: 過湿、深植え、肥料過多
- 予防: 乾湿のメリハリ、根元を埋めすぎない、施肥は控えめに
注意点
CITES 附属書 I 掲載種。野生株の国際取引は禁止。
